ITパスポートで学ぶ会計・財務とは?初心者向けに重要ポイントを解説
ITパスポート試験のストラテジ系で避けて通れない「会計・財務」の分野。一見難しそうに見えますが、企業の活動を数字で見るための大切なルールです。この記事では、初心者の方でも「会計・財務とは何か」がイメージで理解できるように詳しく解説します。
・会計と財務の役割の違い
・ITパスポート試験で会計知識が問われる理由
・企業活動におけるお金の流れの全体像
生徒
「ITパスポートの勉強を始めたんですけど、急に『貸借対照表』とか『損益計算書』とか、算数みたいな話が出てきて戸惑っています……。ITの試験なのに、どうしてお金の話が出るんですか?」
先生
「そうですよね。確かにITパスポートはITの試験ですが、ITを使って解決したいのは『ビジネスの課題』なんです。会社がどれくらい儲かっているか、今お金がいくらあるかを知らないと、適切なITシステムを導入することもできません。だから基礎知識として必要なんですよ。」
生徒
「なるほど。でも、数字が苦手な私でも大丈夫でしょうか?」
先生
「大丈夫です!高度な計算が必要なわけではありません。まずは『お金をどうやって集めて、どう使って、どう記録するか』という全体の流れを掴むところから始めましょう。」
1. 会計・財務とは?ITパスポート試験での重要性をやさしく解説
会計(かいけい)と財務(ざいむ)は、どちらも会社のお金に関わる活動ですが、その目的が少し異なります。一言でいうと、会計は「過去の記録」、財務は「未来のやりくり」です。
ITパスポート試験では、これらは「ストラテジ系(経営全般)」という分野に分類されます。企業が健全に運営されているかを判断するための共通言語として扱われます。
会計の役割:会社の活動を記録して報告する
会計とは、日々の取引(商品を売った、備品を買ったなど)をルールに従って記録し、一定期間ごとに「利益はいくら出たか」「今、財産はいくらあるか」をまとめる作業のことです。これは、会社の成績表を作るようなものです。
財務の役割:お金を調達して運用する
財務とは、事業を行うために必要なお金を「どこから借りてくるか(調達)」や「集めたお金を何に使うか(運用・投資)」を考える活動です。会社を成長させるための資金計画を立てる、重要な意思決定を担います。
試験では、単に用語を覚えるだけでなく、「なぜこの記録が必要なのか」「このお金の使い道は妥当か」といった、経営的な視点が求められます。
2. なぜITエンジニアや社会人に会計・財務の知識が必要なのか
「自分はITの専門家になりたいだけなのに」と思うかもしれませんが、現代のビジネスシーンでは、ITと会計は切っても切れない関係にあります。
理由1:ITシステムの多くは「お金」を管理するため
世の中にあるITシステムの多くは、売上を管理したり、在庫を計算したり、給料を計算したりするためのものです。つまり、会計のルールを知らないと、そもそもどんなITシステムを作ればいいのか、どう設定すればいいのかが理解できません。
理由2:IT投資の効果を測るため
新しいサーバーを買ったり、ソフトウェアを導入したりするには大きなお金がかかります。このIT投資によって「どれくらい利益が増えるのか(投資対効果)」を説明する際には、財務の知識が必須となります。
- 業務の理解:会計知識があれば、お客様の仕事(業務フロー)を深く理解できるようになります。
- コスト意識:「この作業にはこれだけのコストがかかっている」という数字の感覚が身につきます。
- 共通言語の習得:経営層や他部署の人たちと、数字をベースに論理的な会話ができるようになります。
ITパスポート試験では、「ERP(企業資源計画)」などの用語と一緒に、会計の考え方がよく出題されます。これは、ITを全社的に活用して経営を効率化するためには、お金の動きをリアルタイムで把握することが欠かせないからです。
3. 会計と財務の決定的な違いと全体像(図解イメージで理解)
ここでは、会計と財務の関係性をより具体的に整理してみましょう。会社という「船」を動かすために、お金がどのように流れているのかをイメージすることが合格への近道です。
役割の比較整理
会計と財務の違いを、誰に対して何をするのかという視点でまとめました。
【財務(Finance)】
・視点:未来(これからどうするか)
・主な仕事:銀行からお金を借りる、株式を発行する、設備投資を判断する
・目的:企業価値を最大化する
【会計(Accounting)】
・視点:過去(今までどうだったか)
・主な仕事:帳簿をつける、決算書(成績表)を作成する
・目的:利害関係者(株主や税務署など)に正しく報告する
お金のサイクルの全体像
企業の活動は、以下のサイクルを繰り返しています。
- STEP 1(財務):お金を集める(銀行からの借入や投資家からの出資)。
- STEP 2(財務):投資する(工場を建てる、ITシステムを導入する)。
- STEP 3(事業活動):サービスを提供して、売上(お金)を得る。
- STEP 4(会計):活動の結果を記録し、利益を計算する。
試験対策としては、「財務諸表(ざいむしょひょう)」と呼ばれる書類の種類をまず覚えるのが定番です。これらは「会計」の成果物であり、それを分析して次の「財務」戦略を練るという関係にあります。
ITパスポート試験で頻出のキーワードには、以下のようなものがあります。
- 管理会計:社内の経営判断のために使う会計。自由な形式でOK。
- 財務会計:外部の株主や税務署に報告するための会計。法律でルールが決まっている。
- キャッシュフロー:実際の手元のお金の出入り。利益は出ているのに現金がない「黒字倒産」を防ぐために重要。
このように、会計と財務は表裏一体の関係です。次のステップでは、いよいよ試験で最も出題される「財務諸表(決算書)」の具体的な中身について詳しく見ていきましょう。まずは「お金の流れを記録するもの」と「お金のやりくりを考えるもの」があるんだな、という区別がつけば合格の土台は完成です。
※次回の記事では、具体的に「損益計算書」や「貸借対照表」の読み方をマスターしていきましょう!
4. ITパスポート頻出!財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の役割
企業活動の結果をまとめた報告書のことを財務諸表(ざいむしょひょう)と呼びます。ITパスポート試験では、その中でも特に重要な3つの書類、通称「財務三表(ざいむさんぴょう)」の役割を理解することが合格への大きな一歩となります。
財務三表のそれぞれの役割
これら3つの書類は、それぞれ異なる角度から会社の状態を映し出します。たとえるなら、「健康診断の結果」「1か月の家計簿」「お財布の中身の記録」のようなものです。
- 貸借対照表(B/S):「財政状態」を表す。ある一時点(決算日)で、どれくらいの財産と借金があるかを示す「ストック」の記録です。
- 損益計算書(P/L):「経営成績」を表す。1年間などの一定期間で、どれくらい儲けたか、何に経費を使ったかを示す「フロー」の記録です。
- キャッシュフロー計算書(C/S):「現金(キャッシュ)の流れ」を表す。実際にお金がいくら入って、いくら出ていったかという真実の動きを示します。
試験では「ある時点での資産、負債、純資産の状態を表す書類はどれか?」といった形式で、書類の定義を問う問題がよく出されます。B/Sはバランスシート、P/Lはプロフィット・アンド・ロス・ステートメントという英語の略称もあわせて覚えておきましょう。
5. 損益計算書(P/L)の5つの利益と計算の基本的な流れ
損益計算書(そんえきけいさんしょ)は、会社の「収益(入ってきたお金)」から「費用(使ったお金)」を差し引いて、最終的な「利益(手元に残った儲け)」を計算する書類です。
ITパスポート試験では、利益が計算される順番と、それぞれの利益が何を意味しているのかを理解しておく必要があります。利益は、以下の順序で上から順に計算されていきます。
5つの利益の計算フロー
1. 売上総利益(あら利益)
= 売上高 - 売上原価(仕入れ代など)
2. 営業利益(本業の儲け)
= 売上総利益 - 販売費及び一般管理費(給料や広告費など)
3. 経常利益(会社の実力)
= 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用(借金の利息など)
4. 税引前当期純利益
= 経常利益 + 特別利益 - 特別損失(災害や資産の売却など)
5. 当期純利益(最終的な儲け)
= 税引前当期純利益 - 法人税等
ITシステムに関わる費用はどこ?
試験で注目すべきは、ITシステムに関連するコストがどこに入るかです。たとえば、自社で使う業務システムの保守費用や、エンジニアの給料は、通常「販売費及び一般管理費」に含まれます。これを引いた後の「営業利益」が、会社が本業でどれだけ稼ぐ力があるかを示す重要な指標となります。
- 売上原価:商品を作るため、または仕入れるために直接かかったお金です。
- 経常利益:「けいじょう」と読みます。本業だけでなく、利息などの財務活動も含めた「会社としての普段の実力」を表します。
6. 貸借対照表(B/S)の資産・負債・純資産の関係を理解するポイント
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)は、左右に分かれた表の形をしています。この表は「どうやってお金を集めてきたか(右側)」と「そのお金を何に変えたか(左側)」という、お金の使い道と出所を同時に表しています。
B/Sの「左右バランス」の仕組み
B/Sの最大の特徴は、左側の合計と右側の合計が必ず一致することです。だから「バランスシート」と呼ばれます。
【左側:資産】 | 【右側:負債・純資産】
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・現金、預金 | ・負債(いつか返すお金)
・売掛金(未回収代金) | 借入金、買掛金
・備品、建物、車 | ・純資産(返さなくていいお金)
・ソフトウェア | 資本金、これまでの利益の蓄積
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合計:1,000万円 | 合計:1,000万円
重要な3つのカテゴリ
- 資産(しさん):会社が持っているプラスの財産。現金だけでなく、これからお金を受け取る権利(売掛金)や、IT資産である「ソフトウェア」もここに含まれます。
- 負債(ふさい):銀行からの借金など、将来返さなければならないマイナスの財産。
- 純資産(じゅんしさん):株主から出資してもらったお金や、これまでの利益。返さなくていい、本当の意味での「自分の持ち分」です。
ITパスポートでの注意:無形資産としてのIT
近年の試験では、パソコン本体などの目に見えるものだけでなく、目に見えない「ソフトウェア」が資産(無形固定資産)として扱われる点が出題ポイントになります。会社が大きな金額をかけて開発したシステムは、一度に経費にするのではなく、数年にわたって「資産」として計上し、少しずつ費用化(減価償却)していくというルールがあります。
中盤の解説はここまでです。財務三表という「記録のルール」が理解できたら、次はいよいよこれらの数字を使って「会社の経営を分析する」方法や、試験で間違えやすい計算の落とし穴について解説します!
7. 財務分析で企業の健康状態をチェック!収益性と安全性のメリット
財務諸表の数字を並べるだけでは、その会社が本当に「良い状態」なのかは分かりません。そこで、数字を組み合わせて計算し、会社の健康状態を客観的に判断する「財務分析(ざいむぶんせき)」を行います。ITパスポート試験では、特に「収益性」と「安全性」の2つの視点がよく出題されます。
収益性分析:効率よく稼げているか?
収益性(しゅうえきせい)とは、「投資したお金や売上に対して、どれだけ効率的に利益を出せているか」を測る指標です。
- ROE(自己資本利益率):株主から預かったお金(自己資本)を使って、どれだけ利益を上げたか。投資家が最も重視する指標の一つです。
- ROA(総資産利益率):会社が持っているすべての財産(総資産)をどれだけ効率的に運用して利益を出したか。
- 売上高営業利益率:本業の売上のうち、何パーセントが利益として残ったか。
安全性分析:倒産するリスクはないか?
安全性(あんぜんせい)とは、「借金を返す能力が十分にあるか」を測る指標です。どんなに利益が出ていても、支払う現金が足りなくなれば会社は倒産してしまいます。
- 自己資本比率:総資産のうち、返さなくていいお金(自己資本)が占める割合。この数値が高いほど、借金に頼らない健全な経営といえます。
- 流動比率:1年以内に返すべき借金に対して、1年以内に現金化できる資産がどれくらいあるか。100%を下回ると、短期的な支払いに困る可能性があります。
これらの分析は、ITシステムの導入提案をする際にも役立ちます。「このシステムを導入すれば、業務効率が上がり、売上高営業利益率が5%改善します」といった、経営層に響く説得力のある提案ができるようになるからです。
8. ITパスポート試験における「利益」と「キャッシュ」の注意点
会計・財務の学習で初心者が最も陥りやすい罠が、「利益が出ていること」と「手元に現金があること」を同じだと思い込んでしまうことです。ITパスポート試験でも、この違いを突いた問題が出題されます。
なぜ利益と現金は一致しないのか?
現在の会計ルールでは、商品を渡した瞬間に「売上(利益)」を記録しますが、実際にお金が振り込まれるのは数か月後になることが一般的です(掛け取引)。
- 売掛金(うりかけきん):商品は売れたが、まだ代金をもらっていない状態。利益は増えるが、現金は増えていない。
- 買掛金(かいかけきん):商品は仕入れたが、まだ代金を払っていない状態。費用(利益の減少)にはなるが、現金はまだ減っていない。
「黒字倒産」という言葉を知ろう
損益計算書(P/L)の上ではしっかり利益が出ていて「黒字」なのに、売掛金の回収が遅れたり、借金の返済期限が先に来たりして、お財布の中身が空っぽになり倒産してしまうことを黒字倒産(くろじとうさん)といいます。
【利益とキャッシュの違いの例】
1月:100万円のシステムを納品(P/L上の利益確定!)
2月:サーバー代50万円を現金で支払う(手元の現金が減る)
3月:お客様から100万円が振り込まれる(ようやく現金が増える)
※2月の時点では、利益はプラスなのに、現金支払いが先行して苦しくなる場合があります。
試験での出題イメージ
「利益が出ているにもかかわらず、資金繰りに行き詰まる原因はどれか?」という問いに対し、売掛金の増加や在庫の抱えすぎ(現金化されていない資産の増加)を選択させるような問題が出ます。「利益=現金ではない」という感覚を常に持っておきましょう。
9. 初心者のための会計・財務の最重要ポイント整理
最後に、ITパスポート試験対策として、これだけは絶対に外せないポイントを整理します。試験直前の最終チェックに活用してください。
会計・財務の最頻出用語集
- 財務諸表:B/S(ある時点の財産)、P/L(期間の成績)、C/S(現金推移)の3セット。
- 資産・負債・純資産:「資産 = 負債 + 純資産」のバランス関係を意識する。
- 営業利益:本業での儲け。IT投資の効果が最も現れやすい指標。
- ROE(自己資本利益率):株主の視点で「効率よく稼げているか」を見る最重要指標。
- 減価償却:IT機器やソフトウェアなどの高額資産を、数年に分けて少しずつ費用にする仕組み。
ITパスポート合格のための思考法
試験問題で計算が出てきても、決して焦る必要はありません。ITパスポートで求められるのは数学的な才能ではなく、「会社の活動を数字で捉えるロジック」です。
- 「この用語はB/SとP/Lのどちらの話か?」
- 「この計算をすることで、会社の何(収益性?安全性?)が分かるのか?」
この2点を意識するだけで、正答率はぐんと上がります。
会計・財務の知識は、試験に受かるためだけのものではありません。将来、皆さんがプロジェクトを管理したり、新しいITビジネスを企画したりするとき、必ずあなたを守る「最強の武器」になります。まずは身近な企業の決算情報を覗いてみるなど、数字を楽しむ心を持って学習を続けてくださいね。